旅に出たくなる自転車「カワセミ」の開発者に聞く、そのこだわりと広がる夢

旅に出たくなる自転車「カワセミ」の開発者に聞く、そのこだわりと広がる夢


もっと軽く、もっと速く、もっと気持ち良い旅のために…。コンパクトで持ち運びが簡単な自転車を一人の自転車愛好家が開発しました。その名も「カワセミ」。「フレームを折りたたまない」がコンセプトの、輪行用としては画期的なスタイルの自転車です。この自転車の開発者に、この度LIFE-B編集部がインタビューさせていただくことができました。製作に至った経緯など、自転車愛と夢がいっぱいの、開発者の声をお届けします。

「カワセミ」ってどんな自転車?

― LIFE-B編集部:早速ですが、「カワセミ」の特長を教えていただけますか?

―カワセミ開発者:旅を楽しむ人に向けて設計した小径の自転車です。ランドナーやバイクパッキングではなく、折りたたみ自転車で気軽に自転車旅をしたい人は多いと思います。私もそんな気軽でのんびりした旅をしていた一人です。ただ、そんな旅でも「もっと軽快に、もっとスピードを出して走りたい」と感じていました。この「カワセミ」は今までの経験をもとに、持ち運びを簡単にし、さらに軽快な走りのために折りたたみの機構を採用せず、軽くすることにこだわりました。ちなみに、1号機はクロモリで重さは8.7kgです。

― LIFE-B編集部:通常の折りたたみ自転車との違いは何ですか?

― カワセミ開発者:軽さもさることながら、シンプルな三角フレームのため、少ない部材でもしっかりと強度を保っているところ。そのため、漕いだ力のロスが少なく軽快な走りが可能です。なお、フレームを折る自転車のようにあっと言うまに小さくはなりませんが、慣れれば気にならない時間だと思っています。

― LIFE-B編集部:折りたたみではないのになぜ小さくできるのですか?

― カワセミ開発者:輪行時は、ホイール、ハンドルサドル、ペダルなどの部品を外し、フレームの台座に付けていきます。走りも運びやすさも犠牲にせず、なるべくコンパクトになるように設計しています。特に後輪はフレームの中を移動して収納しますが、チェーンを外さずにそのまま小さくできるオリジナルの機構で、特許を申請しています。

― LIFE-B編集部:パーツのこだわりについても教えてください

― カワセミ開発者:走行性能が良く、収納時に収まりが良い部品を選んでいます。例えばフォークのエンド幅は狭いタイプの74㎜に。ブルホーンのハンドルも同様の理由で採用しています。細かいところではバッグを取り付ける台座。旅用の自転車なので、バッグはしっかりと自転車に取り付けたいと考えています。そして、自立させるためのパーツはどうしても取り入れたかったものです。自立時のフットプリントは45×20cmくらいなので、電車では、座席の脇に置いたり、膝に挟んで座ったりしています。

自転車旅の魅力は?

― LIFE-B編集部:ところで、自転車旅の魅力をどうお考えですか?

―カワセミ開発者:自転車旅と一言で言ってもとても広いジャンルなので楽しみ方は無限にあると思います。例えば、自走にこだわり、ロングライドをする旅。これは“走ること”それ自体が楽しい旅だと思います。一方、輪行しながらの自転車旅は走ることに加えて、走っていない時間も旅の重要な目的であり魅力です。写真を撮ったり、その土地の美味しいものを食べたり、電車に乗って会話を楽しんだり…。

― LIFE-B編集部:「カワセミ」の旅は他の自転車とどう違うのですか?

―カワセミ開発者:折り畳み自転車のように気軽に行動でき、クロスバイクのように行動半径が広いこと。どちらも楽しめるのが「カワセミ」の特長だと思います。そして、ハプニングも楽しめること。風が強かったら電車で風上に向かい、美味しそうなお酒を発見したら飲み、自転車は担いで帰ります。が降ったら電車に乗り、晴れてきたら100km走る。そんな旅ができる自転車です。

― LIFE-B編集部:「カワセミ」で行った旅で、印象深いものはありますか?

― カワセミ開発者:最近では、栃木の川治温泉から鬼怒川沿いを上り、峠を越えて会津若松に行った旅が楽しかったですね。東京から会津若松までは、自走だとかなり消耗する旅になりますが、輪行だと景色のよいところだけを楽しめます。鬼怒川沿いに紅葉を見て、街並みの美しい大内宿を通って会津盆地に下って行きました。名物に美味いものなしと言いますが、大内宿の高遠そばはおすすめです。あと、千葉の五井から安房小湊までの旅も忘れられません。クルマも信号もほとんどない、ほぼ林道で房総半島を横断するルートです。アップダウンが多少ありますが尾根道が多いので見晴らしも良く、最後に太平洋の海が見えた瞬間は格別でした。海沿いの定食屋に飛び込み即ビールですw。地魚のうまいこと!

自転車を作るということ

― LIFE-B編集部:話を少し戻しますが、この自転車を思いついたきっかけをもう少し教えていただけますか?

―カワセミ開発者:6年ほど前に購入した折りたたみ自転車がはじまりでした。それまではクロスバイクに乗っていましたが、クルマと信号の多い都心を走ることに飽きていて、すぐにこの小さな自転車での旅の魅力に引き込まれていきました。りんりんロード、霞ヶ浦、富士山、東海道、しまなみ海道、そして海外へも。どこへ行く時も折りたたみ自転車で。当初はのんびり走って快調でしたが、そのうち、ロードバイクの友人に置いていかれたり、上り坂がしんどかったりで、もっと楽に走れる自転車はないかと悶々としていました。展示会や試乗会に出かけては多くの自転車に試乗しましたが、なかなか自分が乗りたいと思う自転車に出会えませんでした。

―カワセミ開発者:自転車ばかりを考えていたそんな頃に自転車デザインの学校を知り、一念発起して通うことに。当初は新しい折りたたみ自転車をデザインすることばかりを考えていました。ただ、自転車の構造を学ぶにつれ、強度と軽量化を両立させるための壁に何度もぶつかります。そんなある日、後輪の収納方法を考えていた時、師匠である木森俊之さんのアドバイスもあり、「カワセミ」の原型を思いつきました。

― LIFE-B編集部:その発想を実際にどのように形にしていったのですか?

―カワセミ開発者:まずは通常の自転車づくりと同じようにジオメトリーを決めてデザインしました。そこから縮小時の形状を詰めていきます。ドロップアウト(エンド)の設計がポイントでしたが、それ以外にもハンドル部分に悩み、デザインをミリ単位で調整し、パーツを厳選していきました。製造時には歪みを少なくし、精度を高くするために銀ロウを使ったり、旋盤を要所要所で使って仕上げていきました。

― LIFE-B編集部:「カワセミ」という名前の由来を教えていただけますか?

―カワセミ開発者:小さいものが、さらに小さくなり、それを広げた時に性能を発揮するイメージだったので、鳥の翡翠を真っ先に思いつきました。近所の和田堀公園で見ていたこともあり、東京発の自転車としてふさわしいかなと。英語やイタリア語の名前は少し恥ずかしかったので日本語のままにしています。

― LIFE-B編集部:東京発というのはどのような意味ですか?

―カワセミ開発者:私自身が東京近郊で暮らしてきたのですが、都心に住む人がワクワクする自転車にしたいという思いが根底にあります。都心を走ることも好きなのですが、休日には自然の中を走りたいといつも思っていました。「家を出たらすぐに良い景色で快適な走りができる」、そんな生活を憧れている自転車人は多いと思います。それができない東京ならではの自転車をつくりたい。つまり、東京に住む人が発想した自転車、東京発信の自転車をつくりたいと考えています。

これからの「カワセミ」は?

― LIFE-B編集部:「カワセミ」は、どのような人をターゲットにしていますか?

― カワセミ開発者:ちょっと大げさですが、「お買い物から世界一周まで」というキャッチフレーズも考えていますw。電車の輪行はもちろん、飛行機を想定して縦・横・高さの3辺合計で158cm以内を目指しています。また薄いためクルマの場合、セダンのトランクに3台くらい入ります。楽しみ方は乗る方の発想でいろいろ広がれば嬉しいです。

― LIFE-B編集部:クラウドファンディング等で、小さな電動自転車が安く入手できる今、どのような差別化を図ろうとお考えですか?

― カワセミ開発者:今出ている小さな電動自転車は、「カワセミ」とはジャンルが少し異なっていると思います。飛行機に積めるような極小の自転車も作られているようですが、それぞれ、ちょっとした移動、ラストワンマイルで乗るには便利だと思います。「カワセミ」は自転車で走ること自体を楽しみたいという人に向けられていて、さらに、それが小さく、軽く、持ち運びやすくなる、という自転車です。

― LIFE-B編集部:最後に、これからの展開を教えていただけますか?

― カワセミ開発者:現在、2号機と3号機を同時に製作しています。これらは主に持ち運びやすさの改良と、調達しやすい部品への変更がメインで、より商品に近いものになると思っています。実際に発売するのはもう少し先になりそうですが、まずはテストと改良を重ね、その後、興味を持たれた方にモニター販売の形で乗っていただきたいと思っています。そして、さらにはクラウドファンディング等で出資を募れたらと思っております。「カワセミ」以外でも小径車を中心に新しいアイディアがいくつもありますので、意欲的にデザインと製作に取り組んでいきたいと思います。

インタビューを終えて

旅する自転車「カワセミ」の開発者から、たいへん興味深い話を聞くことができました。これからも「カワセミ」は改良を重ね、「小さくて軽くて持ち運びやすい」がさらにパワーアップした、新作が誕生することでしょう。とても楽しみですね。みなさんも、これからの「カワセミ」にぜひ注目してくださいね。

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